2019年3月25日月曜日

災害に備えよ。(改訂版)

近年、災害のニュースを聞く機会が増えたように思います。
もし、小笠原滞在中に、
そのような状況におかれたら、
どう行動すればよいでしょうか。

3年前、ハザードマップの存在を紹介した投稿があります。
こちら
今回はもう少し詳しく、ご紹介しよう!という旨の投稿です。
関心のある方、しばしお付き合いくださいませ。
(長いです。)

さて、小笠原で災害と言いますと、
何を想像されるでしょうか。
やっぱり、地震かな。

まずは、小笠原で考えられる地震について、まとめ。
「全国地震動予測地図」というものがあります。
将来日本で発生する恐れのある地震による強い揺れを予測し、
予測結果を地図として表したものです。

以下は、
「30年の間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図」です。
赤に近いほど、その確率が高くなります。
日本全体で見ると、太平洋岸を中心に高いことがわかります。

さて、小笠原は?
凡例では、6〜26%になっています。
かなり幅がありますが、なくはない、ということです。
なぜでしょうか?

小笠原で典型的なのは、
いわゆる「小笠原深発地震」と言われるものです。
皆さんは、2015年に発生した、
最大震度5強(母島・神奈川県二宮市)を観測した
小笠原沖の地震を覚えていらっしゃいますでしょうか?
震源が非常に(異常に、という表現も!)深いため、
広域に揺れがきたことで話題になりました。
気象庁による観測史上初めて、
47全都道府県で震度1以上が確認されたほどです。

実は小笠原諸島西方沖では、
頻繁に地震が発生しています。
そしてそのどれもが、震源がとても深い!
(およそ400~500km、前述の地震は、観測史上最も深い約680km)
これは、プレートとの関わりによって発生するものです。

小笠原周辺では、太平洋プレートが、
フィリピン海プレートの下に沈み込んでいます。
伊豆-小笠原海溝を作り出しているのも、この動きですね。
小笠原諸島が生まれたのも、この作用の一環です。

ただ、2015年の地震の後、
このプレートは、小笠原周辺の深いところで南北に分岐していて、
南側では、深い深い、地面の奥の方で、
下部マントルまで突き抜けていることが、
分かってきました。
(出典:東北大(http://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20170316-8953.html))

通常、プレートは、マントルの上層と下層の間に、
横たわるような形で、沈んでゆきます。(北側もそう、図参照)
けれども、南側では、マントルをほぼ垂直に突き抜けて、
地球内部のコア(核)に近い、
下部マントルに到達しているといいます。

(出典:ハザードラボ(https://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/1/8/18271.html))

だからこそ、「異常に」深い震源になるわけですね。

こうした地震について、もう少し詳しく知りたい方は、
JAMSTECの大林先生らが論文にされておりますし、
以下のURLでわかりやすく解説がなされています。
(http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/quest/20161208/)

なお、この「小笠原深発地震」では津波は起こりません。
多くの場合、津波は、プレートが跳ね上がって、
水(海水)を動かすことによって発生するので、
地下深くで起こる「小笠原深発地震」では、
津波が起こり得ないのです。

(小笠原周辺の地震で、津波が発生しないわけではないので、)
(申し添えます。)

でも、小笠原では、津波の到達が心配されています。
その多くは、小笠原周辺の地震によるものではなく、
遠くで発生した(津波を伴う)地震によって、
もたらされるものです。



では、もう少し詳しく。

日本では、ハザードマップを作成し、
公開している各市町村が多くあります。
自分の暮らす場所にどんな危険があるのか明確になるので、
目を通しておくのがお勧めです。

では、そんなハザードマップから、
小笠原の津波被害について、検討を。

海に囲まれた小笠原ですから、
遠い遠い場所で起きた地震でも、
津波の到達する可能性はあるわけです。

では、どういった地震によって、
どのくらいの高さの津波が来るのか。
そして、到達までどのくらいの時間の猶予があるのか。

小笠原のハザードマップでは、以下のように紹介しています。
(出典:小笠原村「津波ハザードマップ」(https://www.vill.ogasawara.tokyo.jp/bousai/))

「全国地震動予測地図」で、太平洋側が赤くなっていた原因、
南海トラフによる地震では、
ユース周辺で最大9.8mの津波が観測される可能性があります。

10mというと、だいたい3階くらいの高さ。
ユースは、2階建てですから、
ユースの2階や周辺の建物に避難するのではなく、
高台に逃げる方が良いでしょう。
(ユースならば、ウェザー方面が早い。)


(出典:小笠原村「津波ハザードマップ」(https://www.vill.ogasawara.tokyo.jp/bousai/))

(出典:小笠原村「津波ハザードマップ」(https://www.vill.ogasawara.tokyo.jp/bousai/))

なお、湾の奥の方が津波高が高くなる傾向にあり、
河川を遡上する場合も。
あくまでも「予想」の津波高なので、
局地的に影響が大きい場合があります。

また、津波ハザードマップに記載の元禄型関東地震とは、
下図の赤枠周辺を震源とする地震のことです。
1923年大正関東地震(緑枠)と1703年元禄関東地震(赤枠)の震源域の概要図
1703年元禄関東地震(赤枠)の震源域の概要
(出典:産総研「元禄型関東地震の再来間隔、最短2000年ではなく500年」(https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2017/pr20170511/pr20170511.html))

南海トラフ巨大地震に伴う津波に比べれば、
比較的津波高は低いと言えるでしょう。
しかし、それでも3m!
2階の床にも届きます。

また、どちらにしても、
遠方で起こる地震に伴う津波であるため、
到達時間に若干の猶予があります。

津波警報が出されましたら、
島内に防災無線が響くことと思いますので、
冷静に判断することが大切です。
その猶予は、あります。

なければいい。
だけれども、もしそのような状況におかれたら、
まずはどう逃げればいいのか。
そして、どのような状況が考えられるのか。
事前に知っている・考えておくだけでも、
行動は変わります。

なお、この文章は、
研究機関や公的機関の記述などをもとにしておりますが、
もしかしたら誤認があるかもしれません。
どうか、ご参考まで。

きょーじゅ